廃兵院工房

旅行の思い出とか呟きます。昼からビールを飲める仕事につきたい

モーリス・ガムランの回想録を追い求めて

第二次世界大戦で仏軍の総司令官を務めたモーリス・ガムラン(Maurice Gamelin)の名前は、一応本邦でも知られている。あまり良い評価ではないけれど。彼の名前がネットで引っ掛かるようになったキッカケは、やはりHeart of Iron辺りなんだろうか。どうも彼への評は手厳しい、というか怪しい文献をもとに語っているような感が否めない。ナポレオン一世が率いた時代と違って、1940年の戦争は彼一人で軍隊を動かせるものではなかったことを考慮して、もう少し真っ当な評をしてやりたいものとは個人的に思う。

さておき。敗戦の責任をとって軍籍を退いたガムランは、ヴィシー政権が成立すると「戦争への備えを怠った」という罪状で逮捕される。有名なリオム裁判の後に、彼は各地の収容所を転々とし、最終的に旧オーストリア(当時はドイツ領オストマルク)の北チロルに位置するイッター城に収容された。終戦直前には、武装親衛隊によって抹殺されかけるも、米軍と独国防軍の小部隊と共に抵抗してこれを撃退、無事祖国フランスへ凱旋する。そしてパリの自宅で引退生活を送ることになった彼は、回想録の執筆に挑んだ。これが全3巻で構成されるplon社発行の「Servir」である。

一昨年頃から読みたいと思って探していたものの、先日ある事実に気付いた。どうも仏語以外に伊語訳しか見当たらない。あまり本国での売れ行きが芳しくなかったためか、英訳版が出版されていない様子なのだ。ということで勿論、日本語訳もない。

……つい昨日まで私はそう考えていた。しかし事実は違った。ツイッターで「ガムランの自伝が読みたい、誰か訳してくれ」と意味もない愚痴を呟いていると、見知らぬ御仁が引用RTで「『フランス解放戦争史(著、柏木明)』の参考文献に、陸自が訳したガムランの自伝が載っていた」と知らせてくれたのである。まさか、と思って図書館へ走ってページを捲ると、確かに自衛隊幕僚監部の訳本として「Gamelin将軍回想録」なるものが挙げられている。「Servir」の訳本に違いあるまい。

しかし一般にはもちろん出回っていない。であるならば、と防衛省図書館に電話をかけて内部検索していただいたものの、申し訳なさそうに「検索に出ないですね、申し訳ない」と謝られてしまう。いったいどこにいったんだ。万事休す。コツコツ古本検索していくかと諦め顔をしていると、またツイッターに助けられた。相互フォローの某人曰く、靖国偕行文庫にあるとのこと。慌てて偕行文庫のHPで内部検索すると、確かにヒットした。「Gamelin将軍回想録・戦争の序曲時代 1930-1939.8」なるタイトルである。ようやく、ようやく拝める日が来るとは。明日早速靖国へ出かけようと思う。ということで各位、ガムランの回想録の訳本は靖国にあるぞ。一般も閲覧可だという。

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