廃兵院工房

旅行の思い出とか呟きます。昼からビールを飲める仕事につきたい

ベルリンで逃れられないキス

ベルリンに行って何がしたいか。

旅行前、アテンド役の妻にこう聞かれると、「ビアホールで昼間から酒を飲みたい」と即答した。すると苦笑されたので、ちょっと考えてから「あとベルリンの壁をみたい」と付け加えた。もちろんそれは行きましょう、との返事。

壁の多くは破壊されたが、シュプレー川沿いの約1.3㌔の区間が史跡として保存されている。イースト・サイド・ギャラリーという名で呼ばれているらしい。てっきり無味な一枚壁がどでんと立っているだけかと思ったら、屋外ギャラリーとしてイラストが描かれているので眺めているだけで楽しい。

人だかりができている壁があったので目をやると、ブレジネフとホーネッカーがキスしている有名な一枚だった。「神よ、この死に至る愛の中で我を生き延びさせ給え」というタイトル。別名で「兄弟のキス」。落書きが酷かったこともあり、2009年に書き直されたとか。とかく人が集まっている。一番人気といって過言じゃなさそうだ。

観光客が代わる代わる写真を撮る。ラテン系っぽい若い男性4人組が壁の前に立つと、ブレ×ホーよろしく男同士でキスをするふりをしながら写真を撮ってもらっていた。続く女性3人組は真ん中の一人に両脇からキスしながらパシャリ。後に続けばよかったかもしれないが、気恥ずかしかったので私たちは普通に自撮りで済ませた。

いいもん見たなーと思い、ベルリンの壁から撤収…したはいいのだが、その後もブレ×ホーの魔の手からは逃れられなかった。この2人、観光名所にはどこにでもいるのだ。土産屋を覗くと、この作品を題材にしたマグネットやTシャツ、マグカップなんかも売られている。さらには街中でドイツのB級グルメ「カリーヴルスト」屋の広告としても見かけた。ポッキーゲームならぬソーセージゲーム。なんでもありか。

そして帰国日。しんみりした気持ちで、ブランデンブルク空港内のレストランでビールをあおり、搭乗口に向かう。旅行って、終わりが近づき、日常に戻らざるを得ないと気付いてしまった瞬間が一番つらい。ちょっとダウナーになっているところで、2人と遭遇した。

ここにもおるんかい! まじまじと見ると、結構ディープにキスしている。この絵を空港に配置するセンスとは一体なんなのか。なんだかベルリンにしてやられた気持ちを抱きながら、2人に見送られつつ、飛行機に乗り込んだ。

ドイツではキスがあなたたちを逃さない!