廃兵院工房

旅行の思い出とか呟きます。昼からビールを飲める仕事につきたい

7年ぶりの廃兵院

文化の国。

そんなイメージの裏腹か、どこかひ弱なイメージもつきまとうフランスだが、かつてナポレオンが欧州を席捲したように、今なお軍事大国という一面を覗かせている。

血なまぐさいフランスの歴史に触れるのに、もってこいの施設がパリの廃兵院だ。

パリ到着初日、7年ぶりに足を運んだ。この日は廃兵院の目の前で反イラン政府デモが行われており、ライフル銃を持った警官が物々しい表情で警備に当たっていた。バラバラに引き裂かれたイラン指導者の写真が地面に捨てられている。観光気分でいることの居心地の悪さを感じながら、そそくさと入場する。

黄金のドームが特徴的な教会にはナポレオンや世界大戦で名声を馳せた将軍たちが眠る。フォッシュやルクレールといった比較的知名度のある将軍でさえ脇に配置されており、この教会の主人たるナポレオンはど真ん中で存在感を発揮している。ほんの数メートル先にナポレオンがいる。宗教的感動にも似たある種のドーパミンが分泌されそうだ。

敷地の一部は軍事博物館として公開されている。

一次大戦で活躍したルノーFT戦車が中庭にあったのでまじまじと眺める。他の戦車に比して小柄なイメージを抱いていたが、実物はデカい。荒々しいリベットが兵器としての武骨さを象徴しているようにも感じる。ちょうどNetflixで「西部戦線異状なし」を観始めたのだが、こんなもん歩兵で相手するのは願い下げだ。(戦車としては)世界で初めての回転砲塔というのがまた恐ろしい。

お目当ての世界大戦コーナーは、改装で1月9日から6月30日まで休館だった。非常に残念。マルヌ・タクシーやドゴールがBBCラジオの演説で使ったマイクを観たかった。確認不足のこちらが悪いのだが、案内板で見かけたゆるキャラ風ドゴールが満面の笑みを浮かべており、少しイラっとした。

館内地下にあるドゴール記念館は最近リニューアルされたようで、映像を中心とした展示で飽きない仕掛けが施されていた。25分間にわたって流される伝記ビデオは日本語吹き替えもあった。

考えてみると、国を解放に導き、現在のフランスを形作ったドゴールこそ廃兵院(もしくはパンテオン)への「埋葬権」がありそうなものだが、彼は自身の希望通り、故郷のコロンべ村で眠っている。この辺りのセンスが、ドゴールをフランス最後の偉人たらしめている理由かもしれない。