廃兵院工房

旅行の思い出とか呟きます。昼からビールを飲める仕事につきたい

まだ知らない顔がある―「イッター城の戦い」関連の写真を発掘した

探せばあるものだな、と思った。

何の話かというとイッターの戦いだ。昨月ebayで2枚のとある写真を落札した。

それぞれの商品名は「マコーリフ将軍とガムラン将軍」、「ダラディエとマコーリフ将軍とウェイガン将軍」。味気のない表記だが、写真を見たとき思わず「ホンマかいな」と口に出してしまった(ホンマかいな)。明らかにイッター城の戦い直後に撮影された写真であり、かつ今まで公開されていない2枚だったからだ。つまり、イッター城の戦いを物語る写真としては、大仰な言い方をすれば「新発見」になる。

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(左からマコーリフ、ガムラン)単なる偶然かもしれないが、マコーリフがガムランを見上げる構図になっており、年配者に配慮しているような雰囲気も感じられる。

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(左からダラディエ、ウェイガン、マコーリフ)ダラディエがマコーリフのペットの子犬をあやし、それをウェイガンが頬を緩めながら見つめている。

まぁ写真が新たに発掘されたからといって何が変わるわけでもないのだが、個人的には大きなニュースなので、以下に軽く説明を書く。

アメリカ軍とドイツ軍の共闘によって武装親衛隊の攻撃から生き延びたフランス人たちは、戦闘終了後、速やかに安全な後方に送られた。その道中、米第103歩兵師団が司令部を置いていたオーストリアインスブルックに立ち寄り、同師団を率いていたマコーリフ将軍との会見がセッティングされた。上の2枚はその最中の写真だろう。撮影日は1945年5月6日か。

ちなみによく知られている会見の写真がこれ。左からレイノー、マコーリフ、ウェイガン夫人、ガムラン、ダラディエ、ウェイガン。上の2枚目に写っている子犬がマコーリフの足元にいる。撮影者は今回発掘した分を含めていずれも特派員のHorace Abrahams氏のようだ。このAbrahams氏はAFPかAPの記者だと予想するのだが、わかる人がいたら教えてください。 

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まだ私の知らない彼らの表情を垣間見ることができたのは望外の喜びだった。ブログに書きなぐってもしょうがないし、またイッター本に手を加えて再販でもするか…。

 

 

※追記【C93】イッター城の戦い考察本出します

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今年2017年の冬コミに参加します。

5年ほど追い続けてきた「イッターの戦い」に関する考察本を頒布予定です。

表紙絵は 安倍泰師 (@abe_yasushi9092) | Twitter 先生にお描き頂きました。

 

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ページ数は50くらい、100部ほどオフセットで刷って持ち込みます(絶対在庫抱え込むやつだこれ)。価格は700円ほどになるかもしれない。全部売っても赤字なので許してつかぁさい…。

御興味がある方、3日目東V02bでお会いしましょう。

 

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※ Riom TrialをLyon Trialと誤字してしまっている。死にたい。

とんかつ弁当とヴェルサイユ宮

 いくらフランスの文化や歴史に興味を持っているといえど、舌は正直だった。

 昨年夏、ボルドーからストラスブールまで横断した時のこと。唐突に日本食が恋しくなった。忘れられない醤油と味噌の味。

 気になり始めると収まらない性分(欲望に弱いともいう)。これはもう食べにゃあならないと店を探した。日本人街に行けば食えるのは当然だが、わざわざモンマルトルの宿から足を運ぶのはやや面倒くさい。検索していると、程なくして宿から徒歩3分の場所に日本人が経営している日本料理屋があることに気付いた。

 期待に胸を膨らませ向かったのは、18番街のサクレール寺院付近に位置するRestaurant Japonais「縁(enishi)」。記憶は曖昧だが、確かてんぷら定食を頂いた。ただただ美味い。店員のフレンドリーさも嬉しい。隣席でフランス人夫婦が枝豆をつまみながらビールを傾けていた光景が印象深く残っている(フランスでも枝豆はEdamame表記だった)。とりあえずビールに枝豆は万国共通か。

 「縁」では弁当も扱っている。ヴェルサイユ宮を訪れようと思い立った日、正午頃に店を訪れとんかつ弁当を作って頂いた。店員の女性からは「予めご連絡頂ければ、お待たせせずにお渡し出来ますよ」との優しいお言葉。RER(郊外高速鉄道)車内で、とんかつ弁当を食べる稀有な体験をした。まさか白飯を抱えてヴェルサイユに突撃する日が来るとは。またパリを訪れる機会があれば「縁」に行きたい。

 

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 余談。その後、自分はオーストリアを経由してギリシアで知人と合流した。聞けば彼は味噌汁の素を自参している。早速ホテルで熱湯を用意して貰おうとしたものの、何故か願いは叶わず。やむなく我々二人はミネラルウォーターのボトルに粉末を注ぎ、振り、飲んだ。冷たい味噌汁の味は忘れられない。

2017年における戦史研究会リスト

■戦史研究会という大学サークルがある。その名の通り軍事や歴史を取り扱う団体だが、活動内容は各大毎に大きく異なる。ボードゲームを楽しむところもあれば、会員による研究発表を行うところもあり、またオリジナルの会報を頒布する団体もある。

■ふと思い立ち、自分が知る限りの戦史研究会をリストアップしてみた。 というのもこの4年間で多くの戦史研究会が新設された。惜しくも会員が集まらず産声を上げることなく流産した団体も含めれば、その数は20を超えている。今後、休会する団体や新規発足する団体もあるだろうが、その際比較や検証を行う上で一つの材料になれば良いと考え、本ページを記す

■以下、自分が把握している限りで、現在活動中の戦史研究会を創立年順に並べる。一人しか所属していない団体や長く活動が途絶えている団体は一覧から除いた。私のチェックミス不足で漏れている戦史研がある場合には、コメントなどでご指摘いただければ幸甚。団体名の横には、会報や機関紙の名前を付した。

 

東京大学戦史研究会(1982年発足。最古):『東京大学戦史研究会会報』

早稲田大学戦史研究会(1994年発足):『烽火』

法政大学戦史研究会(2007年発足):『法戦華』『Modern Military』

立命館大学戦史研究会(2010年発足):『醜の御盾』 

東北大学戦史研究会(2013年発足):『युधेतिहाससूत्रं』(サンスクリット語で「戦史の本」)

中央大学戦記研究会(2013年発足):『白門戦記』 ※名称としては戦史研ではなく戦記研

明治大学戦史研究会(2014年発足):『紫紺』『紫雲』

同志社大学戦史研究会(2014年発足):『Go,go,go in peace』

福岡大学戦史研究会(2014年発足):『東風吹かば』

専修大学戦史研究会(2015年発足):『鳳誌』

日本大学戦史研究会(2015年発足):『羅針盤

近畿大学戦史研究会(2016年発足)

広島大学戦史研究会(2016年発足):『戦鯉』『DE RE MILITARI』(ウェゲティウスの「軍事論」から引用?)

京都大学戦史研究会(2016年発足)

関西学院大学戦史研究会(2016年発足):『戦月紀』

東京農業大学戦史研究会(2016年発足):『東農戦報』

立教大学戦史研究会(2016年発足)

上智大学戦史研究会(2016年発足)

東海大学戦史研究会(2016年発足)

 

※2000年代初頭に京都大学戦史研究会と同志社大学戦史研究会の存在が魚拓で確認されているが、現在の団体との間に連続性はない。

一橋大学戦史研究会がかつて発足していたと思われる痕跡を見掛けたが、その後の変遷は不明。

※2016年に戦史検定という団体が勉強会の目的で「関西太平洋戦史研究会」を設立したが、本ページで取り扱う大学生・院生で構成される戦史研究会と関係はない。

 

・2017年8月21日追記

コミックマーケット92には関東以外の戦史研究会も多数参加していた。2017年9月には東西戦史研究会合同発表会が関ヶ原で開催される。

「イッター城の戦い」映画化について

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 第二次大戦においてアメリカ軍とドイツ軍が共闘した奇妙な戦闘、イッター城の戦いを題材とした「The Last Battle」の映画化が進行しつつある。昨年初頭に原作の著者がフェイスブックで映画化を報告し、海外映画情報サイトで少し触れられたきり全く音沙汰がないのでどうなったものかと心配していたが、ようやく着手され始めたらしい。今年1月に入って続報が報じられている。

 当初は2017年米国公開の予定だったが、2018年に先延ばしになった。制作会社はStudioCanal。微妙な方の潜水艦映画「U-571」を作った会社らしく、やや不安に襲われる。監督はPeter Landesman。昨年公開された「コンカッション」の監督であり、過去には金獅子賞を受賞している。まだ配役さえ発表されていないので、本当に完成まで辿り着けるのかどうか不明だが、日本公開も待ち望みたいところ。

 ところで一つ気になるのが舞台設定をどうするのかである。イッター城自体は現存しているが、現在は個人所有であるし所有者家族が自宅として利用しているため、とても撮影には利用できないと思われる。となると他の適当な城で代用するつもりなんだろうか。ともあれ、ガムランレイノーがドイツ製短機関銃を振りまわす描写をスクリーンで観られる日を期待期待。

 個人的な話で恐縮だが、昨年夏にイッター村を訪れ、イッター城の城主氏と話す機会があった。城主氏経由で貴重な写真も手に入れることが出来た。その辺の話をまとめて、どこかで頒布したいなぁなどと思っている。

 

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 ※昨年末に落札したイッター城を象ったメダル。1960年代頃、城がホテルとして運営されていた時代に結婚式が行われていたらしく、その際配布されたものではないかと推測。こういう記念品はオーストリアでは割とある文化なんだろうか。偶然だが私が初めてイッター村を訪れた日も、ちょうど城近くの教会で結婚式が行われていた。村民総出で祝うので、非常に活気に満ちた光景だった。

ジャップがアクションフランセーズの通販を利用した件について

 アクションフランセーズをご存知か。このページを読まれている方も歴史教科書で習っただろう、あのドレフィス事件を機に発足した組織である。仏現代史をほんの少しかじった人間としてはまぁ存在自体は知っていたのだが、昨年何気なくツイッターを開いていると、アクションフランセーズの公式アカウントを発見してしまった。それもフォロワー数が7000を超えているなかなかの大手アカウントである。すぐフォローしてウォッチを開始した。

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ツイッターアカウント)

 この組織の面白い点といえば、まず今のフランスでは相当珍しいだろう王政復古を主張していることだろう。ルイに繋がる名跡のブルボン家やコルシカ出身のボナパルトさんではなく、オルレアン家の家長を現正統な王として掲げている。同組織が発足した100年前でも王政復古は無理があると反発があったというのに、この現代に「国王陛下万歳」と真顔で唱えているのだ。面白いとしか言いようがない。

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オルレアン家現家長にしてパリ伯アンリ7世)

 調べてみると数十人でドラムを叩きながら、国王万歳と唱えつつパリ市内を行進する動画をYoutubeで発見した。構成員は我々が脳裏に浮かべるようなネオナチ崩れのスキンヘッド集団ではなく、年端もいかぬ少年少女から足取りのおぼつかない老人までいる。日本の極右団体に比べて、何気に年齢・性別が豊かであった。

 さて、アクションフランセーズをウォッチしている内に、同団体のグッズを通販で購入できることを知った。旗、Tシャツ、バッジ、ネクタイにZIPPOとなかなか種類豊富。加えてセンスが良い。同じく極右と目されるフランス国民戦線に比べて、グッズの質の点では、間違いなくアクションフランセーズが勝っていると感じた。

 となれば欲しくなるのがウォッチャーである。日本発送の可否を尋ねると、いくら待っても返信がない。仕方がないので代行業者を利用することにして注文発送を終えると、宛名を間違えるという大ポカをしてしまった。これについては完全に私が悪い。だが、いくら宛名の訂正依頼メールを出しても全く返信をしない、というのは無愛想極まるのではないか。おじさんは憤慨した。代行業者氏も困惑した。ジャップ相手だから舐めているのではないかとも疑った。

 とはいえ着くには着いたのである。配達会社のお兄さんと代行業者氏が奮闘してくれたらしい。日本に到着したのは、ちょうど昨日(2017/3/11)のことだった。嬉々として開封する。すると注文した9点の内の2品が欠けていることに気付いた(フルールドリスのネクタイピンとフルールドリスのバッジが失われてしまった)。……まぁ損失額は20ユーロぐらいだから、もう一々やり取りするのが面倒極まりないし、連絡しなくて良いかなぁという気になっている。この20ユーロは日本人からフランス王党派への寄付である。ぜひ王政復古を成就してほしい。極東の島国から祈っています。あっ、その前に取り合えず顧客対応を改善してください。本当に星1を連打したかった。

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(ネクタイとバッジが届きました)

 ところでアクションフランセーズにとって参考にすべき「王制国家」の一つとして、機関紙の中で日本が具体的に示唆されている。国民戦線のルペン党首(娘さんの方でなく親父さんの方)が訪日した際、一水会と共に靖国神社を参拝した話は割と有名だけれど、フランス極右連中の理想像が日本というのは面白いところではないだろうか。