廃兵院工房

旅行の思い出とか呟きます。昼からビールを飲める仕事につきたい

パリを論評する床屋のおばちゃん

新婚旅行で1週間ちょっとフランス・ドイツを旅した。

旅行直前に急いで荷造りしたために、床屋に行く暇がなく、髪が伸び切った状況で渡ってしまった。だから旅行後半、髪のボリューム感が気になってしょうがない。現地の床屋に行こうかとも悩んだが、旅行時間を充てるのはもったいないと変な貧乏根性が出てしまい、結局、帰国まで我慢した。

帰国翌日に職場近くの床屋へ行った。妙に客との距離感の近い(祖父母の家の近くにあったような)オバチャンが切り盛りしているタイプの床屋だ。利用は二度目だったが、久々に行ったためか初めての客として対応される。

「お兄さん初めて?」

話を合わせる。この店は長いのよ。もうお客さん減っちゃって閉めようか悩んでるぐらい。ありゃー、髪の毛のボリュームがあって羨ましいわ。お父さんお母さんに感謝しなきゃねぇ。たわいのない会話をしているうちに、新婚旅行に行ってきたばかりとこちらも話題を発射する。

「パリ!私も行ったことあるわよ」

マダムがうんうんと頷きながら髪を手際よく切る。引っ張りながら切るものだからちょっと痛い。

「パリは上は綺麗なんだけど、下は汚いのよね〜」

その通り!と相槌を打つ。これは全くその通り。パリは歩くと、とかく異臭が漂う。1番の理由として考えられるのは、道端にどでんと転がる犬の糞。野良の奴らが残していったのか、飼い主のマナーの悪さなのか分からないが、日本と比べ物にならないほど発見率が高かった。あと、公衆トイレが少ないので道端で浮浪者が立ちションしている景色も割と見かけてしまう。色々な要件が混ざり合わさってパリは臭いのである。口の悪い英紙はパリをヨーロッパで最も汚い「ゴミ箱」と評しているというが、まあそれも納得だ。

「パリで食べたクロワッサンより、成田で買ったクロワッサンの方が美味しかったのよ」

それはどうだろうと思いながら、そうですかと生返事。

「あっちで食べた日本料理も日本人じゃなくてアジア人がやってたのよ!」

まるで日本人がアジア人ではないかのような口ぶり!というか僅かな滞在日数の中で日本料理屋に行ったのかと突っ込みたくもなる。

シャンプーをしてドライヤー。クリームを塗って髭剃りをしてもらう。パリへの悪口は絶えないが、この一言は本心だったような気がするし、俺も賛同する。

「でも、景色だけはパリって感じだったわねぇ…」

臭くても汚くても、パリはパリであって、やっぱり惹かれるんですよねぇ。しみじみ。

会計終わりに大量の飴ちゃんをもらって退店。意外なところで旅行に思いを馳せる機会となった。